文庫版鈴蘭学園物語~special episode~



そうだなぁ、お前が何の根拠も持たず行き当たりばったりで動く奴じゃねぇってのはよく知ってる。

そうした方がいいと判断したのはあらゆる事柄を考慮し、ズル賢い頭で計算してベストな答えを弾き出しての事だろう。




「行動するなら明日が最良だ、新歓で学園中が浮き足立ってるからな。

それに例え誰かに見られたとしても、副会長の俺が理事長を訪ねる理由はいくらでもあるさ。

その訪問がタイミング悪くたまたま理事長が不在の時だったとしても、不思議には思われないだろう?」



ニヤリと笑うその表情に垣間見える、俺と同類の狂気。

俺もコイツも愉しい事が大好きな、同じ穴の狢。


だがコイツは獲物を追い詰めるのに、そのズル賢い頭に頼りすぎるところがある。

そしてコイツの言った通り、俺は俺で思い付きで動くところがある。


そこが俺と聡一郎との決定的な違いだった。




「随分な入れ込みようだなぁ。」


「…お前だって気になってんだろうが。」



そうだなぁ、久々に旨そうな獲物の気配だ。

その外部生とやらに会った事はまだねぇが、聡一郎の猫被りを見破り尚且つそれをスルーしたっつー行動を取ったそいつには、多少なりとも興味はあった。


だが…




(……手っ取り早く、何か食い殺しちまいてぇなぁ。)



どんなに上質な獲物の肉でも、空腹が満たされるのはほんの一瞬。

そしてここ最近食い甲斐のある奴に出会えていなかったせいか、俺はかなり腹を空かせていた。


内側に潜む、餓えた獣が訴える。

どれでもいいから、早く食わせろと。




(…暇潰しに、簡単な『ゲーム』でもやるかなぁ。)



それは聡一郎に指摘された通り、まさに思い付きの行動。

明日、ちょうどお誂え向きの新歓<イベント>もあるしなぁ。


サボるつもりだったが、俺の直感が行くべきだと告げていた。

大勢の人間が集まりゃあ、『獲物』を選ぶのにも困りはしねぇしなぁ。




「明日の新歓は何時からだったかなぁ、20時だったっけか?」


「19時からだって何度も言ってんだろうが。

お前が時間通りに来るなんて全くもって期待してねぇが顔は出せよ、サボりやがったらただじゃおかねぇからなバカ義。」



俺の問いに厳しい表情で釘を刺す聡一郎に対し、形だけの返事を返しつつ。

スマホに連絡があった中で適当な女を選んだ俺は生徒会室を後にすると、同フロアにある会長専用のベッドルームへと向かったのだった。

0
  • しおりをはさむ
  • 120
  • 5994
/ 139ページ
このページを編集する