文庫版鈴蘭学園物語~special episode~

龍ヶ崎 ノエル /同室者はマリモ






約半年ぶりに戻ってきた学園は、相変わらずだった。


三鷹のクソ野郎にいいように踊らされている事にも気づかず、群れるしか能がねぇ生徒会派の連中。

規律を重んじる自分等が人として格が上だと自惚れてやがる、プライドの高い風紀派の連中。

そして様々な思惑を抱きながら、俺の後ろにぞろぞろと引っ付いてきやがる連中。


この檻の中の勢力争いになんざ全くもって興味はなかったが、俺の『家』の存在が俺に無関係でいる事を許さない。


この半年間の『家』での出来事を含め、自分を取り巻く世界に苛立ちを感じていた。

ただただ、全てが煩わしかった。


だが半年前と一つ、違った事があった。

それは【鈴蘭】初の外部生とやらが、俺の同室になったという事…。





ノエル side




「あ、おかえりー龍ヶ崎。」


「……」



夕方、リビングの扉を開ければ出れば炊きたての飯と味噌汁の匂いが鼻を掠めた。

去年と同じ部屋、同じリビング、そして去年は全く使われる事のなかったキッチンで手慣れた様子で飯を作る男。


半年前にはなかった、しかしそれはこの2週間ほどの間でよく見る光景になりつつあった。

入寮初日に俺に説教をかまし、俺の『家』がヤクザだと知っても態度を変えず、そして俺と同室を解消しようとする様子もない外部生――黒崎 誠。





『これから先、ずっと一緒に生活していくんだからさ。

分かんねぇ事はその中で、1個1個解決してけばいいんじゃねぇの?』




偽善者野郎だと内心で嘲りつつ、同時に得体の知れねぇ異質な存在に俺の中では警報が鳴り続けていた。


だが寮室という限られた空間の中でコイツをあえて避けるのは、まるで自分がコイツから逃げているようで。

それが癪で、いつの間にか朝晩顔を合わせれば飯を食うという構図ができあがっていた。




「いっただっきまーす!あ、龍ヶ崎そのレンコンと明太子あえたやつ食べてみて。初めて作ってみたんだけど、なかなかの自信作。」


「……」



一人でペラペラ喋る黒マリモ。


沈黙が苦手というわけでも、喋らねぇ俺に気を使ってるわけでもなく。

好き勝手自由気ままに、俺の前でも自然体で過ごすその姿に胸がざわめく。


俺の返事がなくとも特に気にする事なく、かと思えばたまにこちらをジッと見つめて俺が返事をしねぇのをなぜか不思議そうな顔で待つ時もある。

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