文庫版鈴蘭学園物語~special episode~

龍ヶ崎 ノエル /to be continued…?

――――……




新歓から数日経って、ようやく黒マリモが戻った日の夜。

風呂から上がってしばらくした頃、不意に浴室の脱衣場に忘れ物をした事に気が付いた。


俺の後に同室の黒マリモが風呂に入っていったが、時間的にもうすでに上がり終えてしまった頃だろう。

誰もいなねぇと思った俺は特にノックの類いなどせずに、浴室のドアを開けた。


だがそこには、上半身を写せるサイズの洗面台の鏡の前で、何やらゴソゴソしている同室者の姿があって…




「…おい、」


「!…びっっっくりした、ノックもなしにいきなり開けるなんてマナー違反だぜノエルちゃん。」



なぜか未だに浴室にいる同室者に、怪訝に眉を寄せる。


少し前と格好が変わっている事から風呂上がりだと分かり、洗面所で纏めて髪でも乾かしていたのかと思ったが、未だその黒髪はしっとりと濡れていた。

ふと、そいつの服の袖から覗いた真新しい傷に更に眉を寄せた。




「あー…これは何ていうか、転んだ的な?」



俺の指摘に、へらりと笑って誤魔化すマリモ。

そう、コイツは何かを誤魔化す時によくこの顔をする。

数週間、それが分かるくれぇにはこのマリモと接してきていた。


その怪我は位置的に転んでできるもんじゃねぇ。

見えたのは二の腕の怪我だけだったが、そういや俺が入ってきた時に慌てた様子で服の裾を下ろしていた…。




(……この数日戻りが遅かったのはこれが理由か。)



新歓で何かあったのか。

だがコイツが怪我の原因を誤魔化してる以上踏み込んで聞く事もできず、なぜか俺は苦虫を噛み潰したような気分になった。


それを紛らすように舌打ちを一つ。

俺の忘れた物はすでに見つかっていた、洗面台の物を置くスペースに風呂に入る前と変わらず置いてあった。


それを取り、早々に浴室を後にしようとした俺だった…が。

もたもたと、二の腕に包帯を巻くのに手間取るそいつの姿が目に入った。

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