文庫版鈴蘭学園物語~special episode~

鈴蘭学園物語②夏休み編 /赤煉瓦







――ガヤガヤガヤ…


――ガヤガヤガヤ…



「お母さーん、あれ買ってー。」


「それで旦那に言っても何もしてくれないのよ、ただ家でゴロゴロするだけ。」


「見て見てこの服、超可愛いー!」



俺がバイトをしてる隣町は地元と違って商業施設も多く、夏休みのせいか結構な人で賑わっていた。

ジリジリと焼けるような太陽光が降り注ぐ中、そんな人混みをかわしながら今日はいつもより早めのバイト上がり。


つーのも今日は午後から大事な用事が入ってるからで…




(なんせ今日は美里とお泊まりデートだもんなー。)



それは夏休み前に約束してた事。


俺が行くんじゃなく美里がこっちに来るんだよね、ちょー楽しみー。
もちろん師匠の許可はもらってます。

昔住み込みのお弟子さんとかも居て、部屋数にも余裕があるから寝る場所にも困らないし。


何より師匠に紹介したかったんだよね、俺の友達。えへへ。

栗山も一緒に誘ったんだけどさすがに遠慮したらしい。
まぁ女同士のお泊まり会だもん、居場所ねぇよな。うん。




「んー、確かここら辺だよな…?」



んでもって、夕方駅に美里を迎えに行くっつー予定を控えた今現在。

俺は帰宅前にちょっと寄り道をしていた。


つーのもこの近くに、最近美味いって噂のケーキ屋さんがあるそうで。

情報源はレストランの常連客のお姉さん達、美里へのお土産に買ってこうかなって思って来てみたんだけど…




「お、あったここだ。


―――『赤煉瓦(アカレンガ)』。」



大通りから少し外れた脇道に、小さな看板を発見。


洋菓子店『赤煉瓦』。

煉瓦造りの小洒落た感じのその小さいお店から、甘い匂いが漂ってくる。


窓から中の様子を窺えば、女の子のお客さんがちらほらと。




(女子率高ぇなー…)



そう思いながら俺は木製の茶色い扉に手を掛けた。

まぁどんなに美味いって評判があっても、今の俺の口を満足させるお菓子はなかなかないんだけどね。


ほら俺、まさやんの手作りお菓子散々食ってたからさー。
ちょー美味いんだもん、あのお茶菓子シリーズ。
お陰で舌が肥えちゃったよ俺。



…なんて、んな事を考えてたから一瞬目の錯覚かと思ったよ。




――ガチャッ…



(ん…?)



店の扉を開ける前に開いたのは、路地に面した店の勝手口。

ちょうど俺のいる店の出入り口から見える、店の側面。


そこから出てきた人物に、俺は目を見開き驚く事になったのだった。

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