文庫版鈴蘭学園物語~special episode~

鈴蘭学園物語②夏休み編 /in 立花家




??? side




決して縮まる事のない差がある。


どんなに強くなろうと

どんなに身体が成長しようと

どんなに経験を積もうと。



努力ではどうしようもならない、アイツとの絶望的なまでの差。

それに抗おうとすればするほど自分がますます子供<ガキ>に感じ、そして思う。



どうして俺はアイツより

『――』なのかって…。




















「ふつつか者ですが、どうぞ宜しくお願い致します。」



昔ながらの瓦葺きの家、その玄関。

式台の上にいる師匠に、玄関のたたきに立つ俺と美里。


そこで少し緊張した面持ちでぺこりとお辞儀したえんじぇるに、俺と師匠は顔を見合わせたのだった。




「…嫁か。」


「そ、俺の嫁。」


「え!?」



師匠の言葉に俺が真顔で頷けば、びっくりしたように顔を上げる美里。

その様子にクスクスと笑えば、ようやく冗談だと気付いた美里にぷぅっと頬を膨らまされてしまったのだった。


あはは、んな事しても余計に可愛いだけだっての。





誠 side



美里を駅まで迎えに行ってきた今し方。

近所を軽く案内しながら師匠ん家へと帰ってくれば、台所から漂ってきたいい匂いが俺たちの鼻を擽った。




「千代子さん、ただいまー。」


「あら、お帰りなさいマコちゃん。早かったわねぇ。」



台所に立っていたのは、立花家の紅一点の千代子さんだった。

齢五十過ぎだという千代子さんは、おっとりとした優しい叔母様。


千代子さんは師匠の義理の娘さんに当たるんだ。

俺にとっちゃ料理の基礎を教えてくれた先生ってとこかな。




「はっ初めまして、月岡 美里と申します。

ふつつか者ですが、どうぞ宜しくお願い致しますっ。」


「あらあら、ご丁寧にどうも。

可愛らしいお嫁さんねぇマコちゃん。」


「でしょー?」



玄関でのやり取りを繰り返す俺と千代子さんに、今度は美里も笑みを零す。


軽い冗談はこの家ならではのスキンシップ。
ツッコまずにあえて流すのが味噌なのです。

そして今日の晩御飯はカレーのようですチキンのようです。
俺も後で手伝わなくちゃ。




「美里、こっちこっち。」


「は、はいっ。」



そうして美里の荷物を置くべく、縁側の廊下を通り部屋へと案内する俺。

けどその途中通りがかったとある部屋の前で、美里の足がピタリと止まったのだった。

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