文庫版鈴蘭学園物語~special episode~

鈴蘭学園物語②夏休み編 /ナイトメア




カメラ side



薄暗い店内に、煌めくミラーボール。

バーテンによって色とりどりのカクテルが作られては、客の口へ次々と消えていく。


大音量の音楽が鳴り響き、それに合わせダンスホールではたくさんの若者が踊り狂っていた。



そこは若者たちの夜の桃源郷

CLUB『NigHtMarE<ナイトメア>』。



その二階、VIPルームにて。

外界から切り離されたそこでは、とあるチームの幹部たちによる会議が執り行われていたのだった。











「大将(タイショウ)さすがッス、『鷹』の連中相手に一人で全員を伸(ノ)しちゃうんスから。」


「……」



室内では一番下っ端の若者から、大将と呼ばれた一人の男。

ソファーに一人でかでかと腰掛けるその男を、下っ端の若者は興奮気味にそう褒め称えていた。


『大将』という名の通りこのチームのトップであるその男には、呼び名とは別に『赤鬼』という異名があった。

腰まで伸びた長い髪は真っ赤に染められ、喧嘩の際にはまさに鬼のように暴れ狂う男から付けられたものだった。


だが『赤鬼』は普段は気のいい男だった。

粗暴で大ざっぱな男だが、豪快で面倒見のいい性格からチームの誰からも慕われていた。


それはこの下っ端の若者も例外ではなかった。

若者は純粋に今日の『赤鬼』の武勇伝に賞賛の声を上げていた。



…若者は気付けなかった。

いつもは豪快に笑う口も今は真一文字に結ばれていて、『赤鬼』がどれだけ不機嫌であるか物語っている事を…。




「…アイツの居所はまだ掴めねぇのか?」


「ああ…『鷹』にも何人か送って探らせちゃいるが、あっちも同じらしい。

誰もあの人の所在は掴めてないみてぇだ。」



『赤鬼』の問いに、幹部の一人から声が上がる。

それに気をよくしなかったのは、『赤鬼』に無視された下っ端の若者だった。


『赤鬼』の気を引こうと若者は、ずっと胸の内にため込んでいた疑問と不満を口にした。




「たっ大将、そんなどこに居るかも分からねぇ女の事なんてもうどうでもいいじゃないッスか。

大将なら女なんていくらでも…」


「っ、バカ…!」



若者の不運は一つ、チームに入って間もないという点だった。

喧嘩の腕から早々に幹部直属の下っ端に任命された若者には、まだ知らぬ所だった。


『赤鬼』がどれだけ一人の女に恋い焦がれ、狂っているのかなど…。

幹部の一人が若者の口を止めようとしたが、すでに遅かった。

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