文庫版鈴蘭学園物語~special episode~

鈴蘭学園物語②夏休み編 /金魚と水草





――ジャーー…



「…誠さんって、お顔も男前だったんですね。」



お泊まり二日目。


洗面所で遭遇した寝ぼけ眼な美里に、呆然としながらそう言われ。

顔からポタポタと水を垂らしながら、あ…っと間抜けな声を上げた俺だったり。





誠 side



いやはや、一日目は一応モッサリ前髪で通してたんだけどさ。
師匠ん家だし寝起きだし、気ぃ抜きまくりの抜けまくり。

すっかり自分の顔の事を失念しちゃってました失敗しました。
えんじぇるに素顔を目撃されちゃいました。


でもま、特に慌てはしなかったよ。




(…まぁいっか、美里だしな。)



うん、見られちゃったもんはしょうがないし。

てかこのお泊まり期間中、いつか素顔を見せようって思ってたとこだったし。


うっ嘘じゃないよ嘘じゃ。

言い訳じゃないよ違うよホントだよ。




(だってよくよく考えたら、美里に顔の事隠しとく理由なんてないもんなー。)



さり気なく御披露目できて、却ってよかったかも。
や、んな大した顔面でもないんだけどさ。

いざ打ち明けるってなると何て言っていいか悩んで、二の足踏んじゃってただろうし。
うん、却ってよかったかも。


でも『紅の君』の事は伏せておいた。

あの時の俺の顔を見知ってる奴も数える程度だし、もう過ぎた事だし、わざわざ言う必要もないかなって思ってさ。


んで、前髪で顔を隠してる理由はただ単にバ会長に顔見られたくないんだってだけ言っておいた。


そしたら…




「分かりました。

三鷹会長の事は尊敬してますが、同じ女性として誠さんの貞操は必ずやお守りいたしますっ。」



…うん、いやまあ。

分かってもらえたのは何よりなんだけどさ。
ちょっと深読みしてる感否めなかったけどさ。

こうもすんなりと美里に納得させたバ会長の立ち位置を、ちょっぴり心配しましたよ俺は。




「あっ男前と言ったのは、決して男っぽいという意味ではなくっ。

凛々しいというか精悍というか二枚目というかっ、とにかく素敵です誠さんっ!」


「え、えっと…ありがとな。」



凛々しいも精悍も二枚目も男相手に使う言葉だけど、気持ちは伝わったよ。

ありがとマイえんじぇる。


そんな感じでまた一歩、女の友情が深まった夏の朝。

午後は一緒に宿題したりスイカ食べたりしながら過ごした俺たちなのでした。


その日の、夕方の事――…

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