文庫版鈴蘭学園物語~special episode~

鈴蘭学園物語②夏休み編 /無音のインテルメッツォ





PM 10:27



誠 side




「はぁ…!はぁ…!」



浴衣姿のまま携帯を片手に外に飛び出した俺は、その足で思い付く限りの場所を探し回っていた。


祭りのあった神社に、散歩に出掛けた公園。

もしかしたら行き違いがあったのかもしれないと、スーパーにも足を運んだ。


けれど美里の姿はどこにもなくて…。


ぜぃぜぃと息切れ。
ポタポタと汗が流れる。

何度鳴らしても繋がらない美里の携帯に、俺はただただ焦りを募らせていた。




(っ、やっぱりもう…警察に通報するしか…!いや、それより先に栗山に電話した方が…!)



拉致、誘拐――最悪の事態が頭からずっと離れない。

先月起こったミヤの件もあるし、何より美里は生粋のお嬢様だ。


もしかしたら『家』絡みの誘拐かもしれない。

だったら俺の手にはもう…!


そう思い至った俺は警察の前に幼なじみの若武者と連絡を取ろうと、携帯のボタンに手を掛けたのだった。



…が、その時だった。





「――えっ違いますって、その子じゃなくて『マコト』はもう一人の黒い浴衣の子の方ッスよ。」


「、っ?」



偶然通りかかったコンビニ前。

その入り口脇でアイスを食べながら電話をしてる、二人組の男に目が行ったのは…。


呼ばれた名前に、携帯に掛かっていた手が止まる。


そうしてよくよくその二人の男を見てみれば。

それは祭りの時美里をナンパしていた、あの…チャラ男達で。




「茶色い髪の子じゃなくて、花のコサージュ付けた黒い髪の……あれ?もしもーし?」


「なに?切れちゃったの?」



電話をしていたチャラ男の一人がパタンと携帯を閉じる。

首を傾げつつもそのままアイス片手に会話を続ける男達。


…気付いた時には、身体が先に動いていた。




――ガシィッ!


「「……え、」」



後ろからチャラ男二人の肩を掴む。


きっとこの時の俺は、鬼のような形相だったに違いない。

その証拠に二人が俺を見た瞬間、顔を真っ青に引きつらせていたから…。


ボタリ…とチャラ男達の手からアイスが落ちる。

俺はそいつ等の首根っこを掴むと、ズルズルと物陰へ引きづり込んでいったのだった。







間奏曲<インテルメッツォ>



―――『無知なる人』






「…命が惜しけりゃ知ってる事全部吐きやがれテメェら。」


「「はっはいぃ!」」



コンビニの裏。


そこで俺は、自分が居なかった数ヶ月間の出来事を知る事になったのだった。

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