文庫版鈴蘭学園物語~special episode~

鈴蘭学園物語②夏休み編 /稲妻のワルツ

―――……




PM 11:03




「そしたらよーそん時のコイツの顔ったら…」


「それはテメェが先に逃げっからだろ!あの後すっげー大変で…」


「ぎゃははは!ばっかでぇお前ら!」





夢うつつ、微睡む意識の中。


騒がしい話し声で、ふと目が覚めた。

ゆっくりと瞬きを繰り返せば、おぼろげだった視界が次第にはっきりとしてくる。


そうして気付いたのは、自分がソファーの上で寝ている事。

そして周りがたくさんの人達で溢れ返っている事でした。


と、その時…




「よお嬢ちゃん、目ぇ覚めたか?」


「っ!」



間近で聞こえたその声に驚いて、ソファーの上で飛び起きれば。

私のすぐ傍に腰掛けていたのは、真っ赤な長い髪の…野性的な笑みを浮かべた男の人でした。





美里 side



知らない場所、知らない人達。

目覚めた私の頭は、自分を取り巻く非常事態に一瞬にしてパニックに陥っていました。


自分がなぜこんな所にいるのか分からなくて…。

混乱がピークに達しながらも必死に最後の記憶を思い起こそうと、胸の前でギュッと両手を握り締めた。


けれど…




(…っ!おっ男の人ばかり…!)



目の前に居る赤い髪の男の人を始め、周りで騒いでいるのは強面の男の人達ばかりで…。

学園で見る【黒椿】の方々よりも屈強で…いわゆる不良と呼ばれる類の人達を前に、私は自然と涙目になっていました。


思わず部屋の隅の方へソファーの上をずりずりと後退り。

きょろきょろと忙(セワ)しなく辺りを見回した。




(っ、ここは一体っ…!?)



お酒や煙草の匂いが鼻を突く。

男の人達の笑い声が、耳に響く。


考えようとしても恐ろしさの方が勝(マサ)ってしまって、うまく頭が回らない。

つい数ヶ月前の記憶が脳裏を過ぎり、カタカタと自分の身体が震えているのが分かりました。


そんな風に私が混乱と恐怖に今にも泣き出してしまいそうになっていた…と、その時でした。




――ぽんぽんっ



「安心しな嬢ちゃん、怖がる事はねぇ。

俺が居る限りコイツらはアンタにゃ指一本触れやしねぇからよお。」


「、ぇ…」



そう言って赤い髪の男の人が右手を伸ばし、私の頭を優しく撫でたのは…。


その人の思わぬ行動にびっくりして、私は思わず目を見開き固まってしまった。

同じソファーに悠然と座るその人は、左手でお酒の入ったグラスを傾けると再び口を開いたのでした。

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