文庫版鈴蘭学園物語~special episode~

鈴蘭学園物語②夏休み編 /魅惑のファンタジア






『――叫んだって誰も来ねぇよ。テメェは黙って俺のガキ孕みゃいいんだ、マコト。』

















AM 0:31




「あっ姐さん、ちょ…待って下さ…!」


「いっ息が…息が…!」


「お前ら足遅すぎ!もっと死ぬ気で走れ!」


「「はっはいぃ…!」」





誠 side



ぜえぜえと息切れを繰り返す案内役のチャラ男二人にむち打ち、夜の街を浴衣で全力疾走する事何と一時間。

俺たちは一棟の雑居ビルへと辿り着いた。


すぐ近くに繁華街があるにも関わらず、ビルの前の道は思いの外人の行き来が少なかった。

このビルの地下、階段を降りたとこにナイトメアの溜まり場でチーム名の由来ともなったCLUB『NigHtMarE』がある。


地下っつーのと防音がしてあるせいか、階段の入り口の前に立っても物音一つしてこなかった。

や、看板の電気が消えってっから単に今日は定休日なのかもしれない。




(…三年ぶりだな、ここに来んのも。)



ようやく着いた目的地。

美里は無事だろうかと、心配と不安がせめぎ合う。


チャラ男達の『もうすぐです』って言葉に引きずられて、ここに来るまで一時間以上も使ってしまった。

タクシー掴まえたかったんだけど慌てて玄関を飛び出したから、とっさに携帯は持ったけど財布を置いてきてしまったのが痛かった。


地下へと続く薄暗いコンクリートの階段。

それを前に荒れた呼吸を整えつつ、俺は無意識に深いため息を一つ。




(…会いたくねぇなぁ。)



むーうー、と。

意味もなく唸り声を上げる俺。


この先に居るであろう男の事を思い、気が重くなる。

まぁいくらここで足踏みしたとこで、俺ん中に降りる以外の選択肢は用意されてないんだけどさー。




「お前らはここまででいいよ、案内ありがとな。」


「え、あっ姐さん…」



未だ息切れ中のチャラ男二人にそう言い残すと、俺は地下へ続く階段へと足を下ろした。


こうなった原因はチャラ男達にもあんだけど、軽くお礼は言っておいた。

仮にもナイトメアの人間だろうに、俺をちゃんとここまで案内してくれたからね。一応。




「……」



コツ、コツ、と。


一歩一歩踏みしめながら、俺は一人地の底へと歩みを進めていった。

両側の壁には、ライブやらイベントやらのチラシが所狭しと貼られている。


そうして到着したクラブの扉前。

分厚い革張りの扉にはやはり『Close』の掛札が。

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