神様への質問【完】

神様への質問 /1 家族

「沙良ちゃん、お疲れ様。もう上がっていいよ」

 白い髭を蓄えたこの店のマスターが、カウンター越しに優しく微笑む。


「旅行は明日からだっけ? 気をつけてね」


「うん。……龍さん、無理言ってごめんね?」


「なに、10日間ぐらいなんとかなるさ。楽しんでおいで! いい出会いがありますように」


 茶目っ気たっぷりに言って軽くウィンクしてくれた龍さんに、笑顔で応える。


「お先に失礼します」


 更衣室に入ってエプロンをはずし、龍さんに手を振って外へと出た。





 私は、松本 沙良(まつもと さら) 二十歳


 駅前にある紅茶とケーキのおいしい喫茶店「ノワロー」で働いている。


 働いている、といっても、一番お客さんの多い夕方の3時間だけだから、お手伝い程度だ。


 マスターの龍さんはお父さんの親しい友人で、二人目のお父さんって感じ。


 仕事が終わるのは夕方7時。


 家路を急ぐ人の波に流されるように、私も家へと向かって歩きだした。



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