僕らアメフト同好会 短編集【完】

短編集 /第6話 春の訪れ


前回の番外編に少し出てきた、七海視点。とあるメンバーとの恋のお話です。


 四月初めの、雨の朝。

 バスを待つ人々はみな、少し肌寒そうに身を縮めている。

 静かに降り続ける雨を傘越しに眺めながら、冷たくなった手に息を吹きかける。

 定刻に五分ほど遅れてバスが到着すると、急いで傘をたたみ、それに乗り込んだ。


 あっ……居た。

 いつもの座席に彼の姿があるのを見て、ほっと胸をなでおろす。

 少し緊張しながら彼より二つほど前の座席横にある手すりに摑まると、さりげなくその寝顔に目を向けた。


 部活で疲れているのかな。今日もぐっすりと眠っているみたいだ。

 窓ガラスに頭を預け、曲がり角に差し掛かるたびに痛そうな音を響かせているけれど、それでも彼が起きる気配は全くない。


 こうしてバスで一緒になれるのは、決まって雨が降っている日の朝だけ。多分、晴れた日には大学までバイクで通っているんだろう。

 帰りに会うことがないのは、毎日部活で遅くなるから。


 ふっくらとした頬が、ふいにムニャムニャと動く。目元や口元が微かに緩んだみたい。夢の中で何か、おいしいものでも食べているのかな?



 雨の日は好き。

 こうして大好きな人の寝顔を、ずっと見ていることができるから。




 

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