蝶は花に止まりけり【完】

ここは吉原 /降りしきる花の下で


茶屋から声がかかれば、『花魁道中』が始まる。

禿や新造、若い衆を引き連れての花魁道中。


「・・・・・・やっぱり、これ履かないとダメ?」


そう言って首をかしげ簪を揺らすひな菊に、若い衆が苦笑い。


「ちゃんと俺が支えますから」


そんな彼の声にひな菊は同じように苦い笑みを浮かべて息を吐く。


「陸さんのことは信用してるの。でも、いつか転んでしまいそう」

「そのときは俺のせいにしていいですから」

「――えっ?あ、そんなことっ」

「いいんです。ほら、肩に捕まって」


ふんわり笑う陸にひな菊も仕方なさ気に笑って足の指を鼻緒に通した。


本来なら若い衆を何人も従えて、禿に新造とでそぞろ歩く花魁道中。

けれど、そんな人を養うだけの力を持たないひな菊だから、

その花魁道中の先頭は雪風が、そしてひな菊はその後ろを歩いた。


茶屋に着き、高下駄をやっと脱いでひな菊は息を吐く。

そして急いで雪風の元へ走って――。


「姉さん、あのっ」


お礼を言おうとするひな菊の唇に雪風の人差し指がそっと当てられる。


「七日道中させて上げられないのはあたしの力不足。謝るのはあたしの方なんだからこんなことはなんでもないよ」

「でも・・・・・・」


それでも眉尻を下げていくひな菊に雪風はフッと笑う。

0
  • しおりをはさむ
  • 4377
  • 484
/ 477ページ
このページを編集する