蝶は花に止まりけり【完】

桜の木の下 /花は散り行き、実を付ける


時はめぐり、

再び桜の花が咲き誇る頃。


「お菊ちゃーん、お店手伝って―!」

「はいっ!」


ここは江戸から少し離れた小さな旅籠。


「お風呂の用意とそれから今日はお天気がいいからお布団干して!」

「あっ、お妙さん、薪がもう少ないから――」

「あ――っ!お菊ちゃん!?」


40歳ほどのお妙に口をへの字にされてひなは自分の口元を両手で覆った。


「『お母さん』でしょ?」


言い聞かせるようなお妙の台詞に、


「すみません、お母さん」


ひなは照れるように口にして笑う。


名前も『ひな』から『お菊』に変えて、

二十歳を少し過ぎたひなの姿がそこにあった。
 

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