青薔薇荘に夢などない

第二章 管理業務は山在り谷在り /≫雅流の、語るに勝る流れた涙



 謎は、中途半端に、解けた。その閃きは、偶然訪れた。


「榮田名連……か……!」


 従業員に果てしなく優しい職場に甘えて、食べたり寝たり。そんな穏やかな毎日を過ごしていて、ふと、蔵書の一冊に手を伸ばす。その表紙が、記憶も新たな細密画で描かれていた。著者名は、榮田名連。


 さかえだなつら。
 さかだえめいめい。
 さかだえれんれん。


「ああ……成程……」


 この三名は、おそらく、同一人物だ。


 名銘さんの、最初の名乗りが少し不自然だったこと。彼が私の携帯に登録した苗字が「さかえだ」だったこと。仙内さんが、「榮田名連」の蔵書に反応したこと。そして、名銘さんと「れんれん」さんが、双子を否定も肯定もせず、また、全く同じ左足の引きずり方をしていたこと。ヒントは、いくらでもあった。


 そして、決定的なのがこの、榮田名連著作の書籍「動物と人間の行動学」だ。


 榮田名連。彼は、売れっ子とまではいかないものの、コアなファンが多い作家だ。私もその一人。彼は実用書を主に書く作家で、小説は書かない。そして、全く特殊な執筆スタイルを採用している。


 そのスタイルとは、「調べ尽くす」。この一言に限る。しかも、それまで自分が全く関わったことも聞いたこともないようなことを、一人で一から調べ尽くして、それでいて専門家も唸るようなニッチなネタを提供するのだ。まぁ、マルチなんですよね、羨ましい。


 「動物と人間の行動学」には、そんなマルチな先生の手による、動物の細密画がふんだんに掲載されているのだ。榮田名連ビギナーには、まずこの本を勧めよう。ググっても可。

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