青薔薇荘に夢などない

第三章 青薔薇荘に夢などない /≫



 なぜか、朝は来る。


 もうどうでもいいやと思って、おざなりに薬を飲んでぞんざいに眠っても、なぜだか、朝は来る。


 神様というのがいるのだとしたら、どうして私の朝を、本当に朝を迎えたかった人たちのために使わないのだろう。


 どうして彼は、私をここに置いたのだろう。他の誰かじゃ、駄目だったんだろうか。きっと他の誰かだった方が、もっとスムーズに事が運んだのに。


 どうして、彼は。


「かーんーりーにーん」



 りらん、りらん♪



「かーんーりーにーん、寝てンのかな。まさるんから工具借りてこようかな!」


「すみません、起きてます。今起きました」


 差加田絵さんが訪ねてきたようだ。朝というか、昼と言った方が正しいような時間になっていた。私がドアを開けると、差加田絵さんがニカッと笑って、おはよう、と言った。


「昨日忘れ物したんだ。皿。あとさ、携帯どうした?」


「ああ、ごめんなさい、その。電源を切ってあるんです。えっと、見たくなくて」


 満夜君が私の部屋から出て行った後に、届いたメール。見たくなくて。


「ふーん? じゃあ困ったな。板任サンが連絡したいんだって」


 板任さん? 彼女は今おひとり様ライフを満喫していて、今更私に用などないはずでは。


「板任サン、管理人のこと気に入ってたもんね。何の本貰ったの?」


 あれは、やっぱり、気に入られていたんだろうか。


「だまし絵の絵本」


「へー? 俺はね、DEATH辞典ってやつ」


 デスジテン?


「それによると人間は、二階の高さからでもヘタすると死ぬんだって。まさるん超怒ってさ。秘密基地への入り口メッタメタに塞ぎやがンの。やり過ぎだっつの」


「そりゃ怒りますよ」


 だって、雅さんは差加田絵さんのことが好きなんだもん。


「なんで? えー、じゃあさ、携帯はもう使わないの?」

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