青薔薇荘に夢などない

第一章 住人達は概ね偏屈 /≫4号室の主義と、管理人の主張

 

 雨上がりの青薔薇荘は壮観だ。


 庭の薔薇の花たちが、命の源を得て生き生きしている。


 咲き誇るのは色も種類も様々だ。でも、何故か青い薔薇は、ひとつも見当たらない。


 赤い薔薇の花ことばは「愛情」黄色は「可憐」ピンクは「上品」。


 そして青い薔薇と言えば昔から、「不可能」の代名詞とされてきた。


 青薔薇荘という屋号は、なにを意図してつけられたものなんだろう。なんて。思いを馳せたくなる。


 けれど、こんなに素敵な景色なのに、私の隣に居るのは板任さんで。


 しかも、ごみ袋を抱えていて。


「管理人さん!」


「な、なんでしょう、板任さん」


「……悪かったわ」


「へ?」


 ごみ袋を置いて、カラス除けのネットをかけて、その間沈黙していた板任さんが口を開き、そして。

 
 言い難そうに、でもきちんと頭を下げて、謝られた。


「な、ななんででしょう、板任さん」

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