LOST CHILDREN 【01】

聖人への階段 /Heart Shaped Box


お昼休み以降
ロムくんは保健室で休んでいたから放課後に様子を見に行った。

目を覚ました気配に静かに歩み寄る。

〈シャッ〉

声をかけるより先にカーテンが開いた。

「ロムくんおはよう」


「ン゛……空調で乾燥した」

小さく咳払いをしていつもに増して寝起きの悪いロムくんが不機嫌そうに低く呟いた。

ライブが近付くにつれて張りつめているのか急速に気持ちがピリピリしているのを感じた。


ベッドにテーブルを設置して静かにお茶の用意を始める。

自宅から持ってきた青紫の花のハーブティーをガラスポットでいれて
冷蔵庫にあったレモンを取り出し、カットしておいた。

「あったかいの飲むといいよ。マロウ・ブルーのお茶、喉に良いんだよ。」

耐熱ガラスのティーカップにお茶を注ぐ。

「うわ、スゲー色。」

まるで着色したみたいなそれを見てロムくんの目は一気に冴えたみたい。

透明度の高い藍晶石(ランショウセキ)のように澄んだ藍色

でも
そのブルーの美しさは一瞬。

みるみるうちに鮮やかさを失っていく。

「不思議だな。これ、飲んで良いのか?」

「待って」

ハチミツと搾ったレモンを混ぜ
仕上げにスライスしたレモンを飾った。

すると今度はレモンの酸に反応して
夕焼けみたいなサーモンピンクに変わる。

「どうぞ」


「綺麗だな…」

少し独特の風味があるだけでこれと言った味はないけれど
それはちょうど色のついたホットレモネード。

ロムくんは何も言わなかったけど目を細めて〈ありがとう〉と伝えてくれた。

(よかった)

気に入ってくれたみたい。

「スタジオ、今夜は色々ライブの打ち合わせなんだ。」

「うん、今日は遠慮するね。」

魄乱のメンバーと言えども
音楽に関して無知なわたしが居ては邪魔なだけだと思う。

彼らの領域に厚かましく踏み込むつもりはなかった。

明日は土曜日、いよいよライブ当日。

今日がライブ前の最後のスタジオ。

意外だけどロムくんの雰囲気は少し張り詰めている。

人一倍責任感は強くてその分プレッシャーも相当強いみたい。

普段わたしに見せないだけでロムくんはプロ意識が高い。

ロムくんはわたしにいつも気を配ってくれるし
それに極度の照れ屋なところもあるからわたしが居ると調子が変わる。

だから今日は邪魔したくなかった。

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