暴君総長さまのヒミツの恋人

epilogue /穏やかな時







「玲、起きて?れーっ」


俺に抱き枕にされてる柚瑠が、一生懸命俺の胸を叩いて起こそうとする声で目が覚めた。


「ね、れー、起きよう?」



柚瑠は決して激しく起こしたりしない。

ほんの少し振動が来るくらいの強さで、腕や胸元を叩きながら、寝言よりも大きくて、普通の話し声よりも小さく潜めた声で、起こしてくれる。


俺は柚瑠のこの穏やかな起こし方が大好きだ。

だから、つい寝たフリをしちゃうんだよね。


で、その内に柚瑠の体温が心地良くて、柚瑠を抱き締め直して寝ちゃうんだ。



「玲ってばー、起きてよう」


困り果てた声が、俺の耳を擽る。




それもそのはず、今日は柚瑠が楽しみにしてたシンの彼女と会う日なんだから。






あの日、全てが終わった俺は宣言した通りbloodstoneを引退して。

相変わらず泣き付いてくるケイや、他の同盟傘下チームの総長達と連絡は取ってるけど、廃倉庫にはあれ以来行っていない。



柚瑠と一緒に穏やかな日々を過ごしていた。

柚瑠のリクエストを聞いては、デートに出かけて。
何も思いつかない日は、近所を手を繋いで散歩して。

その日が雨なら、部屋の中で一緒に映画を見る。



すごく贅沢だよね。

何も気にせず柚瑠といられてさ、1日中柚瑠とくっついて、くるくる変わる表情を見ていられるんだから。



そんな穏やかな春休みの最後は、柚瑠の両親がいる海外へ一緒に行く予定を立ててるんだ。

出発まであと僅かだから、柚瑠がずっと会いたがってたシンの彼女との約束を取り付けたんだけど。




昨日は楽しみで中々眠れないって言ってた柚瑠は寝不足の筈なのに、今朝はやたら早く目が覚めたらしい。

待ち切れない子供みたいに俺を起こしにかかったんだよね。



「おはよ」


ゆっくり目を開けて、柚瑠と目を合わせて挨拶を口にすると、さっきまで必死で起こしてた筈の柚瑠が顔を真っ赤にして、俺の胸に顔を擦り付けてきた。


「なに、なに、ゆず?どうしたの?」

「〜〜〜っ、玲ズルいっ」

「えっ、なにが?」

「色気がっ…すごいんだもん……」



は?色気?

意味分かんないんだけど。


でもこのシュチュエーションってラッキーだよね。
自ら俺の胸に飛び込んできちゃうんだからさ。


「ゆず、」


顎に手をやって上を向かせると、まだ顔が赤いままの柚瑠が目を潤ませて俺を見る。


うー、ヤバイ。

理性が吹っ飛ぶ。

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