少年

半世紀が過ぎた。


キムは百歳を越えてからもうじき10年になる。
セイムも80近い立派なな老人だ。
キムの夫は百歳を待たずに亡くなっている。

キムは相変わらず異次元に足を踏み入れることができないでいた。

異次元へのカギを見つけてから、毎年キム家族とアイムの妖精スポット旅行を続けていたが、場所をヨーロッパ以外に広げても、季節を変えてもキムには何の進展も無かった。

アイムはあれから10年後妖精達と対面できるようになり、あちらの世界を見ることもできるようになっていた。
透視マシンの検査でも手術無しでキム同様のアンテナが育まれていることを確認できた。

しかしアイムもそれ以上の進展が無いままだ。

キムの場合は、妖精達への不信感が拭いきれないこととこの世界への執着心がブレーキになっていることは明らかだった
妖精達もいつからか諦めたようで、その代わり何かを待っているように見えた。
何かとはどうも『その時』であるだろうことが分かり始めていた。

夫が亡くなった時キムが「妖精達が夫を連れていく………」と呟いたのをセイムが聞いている。

キムにその時が来たらやはり妖精達が連れていくのかもしれないとアイムは考えていた。
そしてそれが妖精達の待っている時なのだと。

キムにとっては、この世界への、というより息子セイムへの思いが、あちらの世界への憧れを超越した存在だ。
そのブレーキを外すことは絶対不可能だと、セイムにもアイムにもキム自身にも、そして妖精達にも分かったのだ。


アイムはセイムとの共同研究で、完全にできあがった新人類アイムの神秘と例の脳にできたアンテナ構造の解析を進めており、最終段階まで到達していた。

上手くいけば、脳アンテナの原理をアイムの宇宙進出に応用する予定だ。


ある日キムが老体にムチ打ってアイム宅を訪問した。






つづく





2018年8月1日(水) 投稿 著者アイカ(M・S)









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