5人の王子と氷姫 ー悪魔の爪跡ー

第二十九章 犯人の正体

目の前に広がる海から、冷たくて優しい風が僕たちを包んでいた。

真っ青な空に浮かぶ白い雲の合間から、陽光がオーロラのように太平洋に注ぐ風景は神秘的だった。

「綺麗だね……」

僕は美しい風景に見とれた。

「……そうね。素敵だわ」

僕はSJにかける言葉が見つからないでいた。

SJの傷ついた顔は、僕に祖母を思い起こさせた。

「SJ、僕、SJのためだけに歌ってあげる」

僕はSJの顔を見ながら歌い始めた。

祖母が好きだった僕の歌。

Amaging Graceを……

僕の声は、いつにもまして伸び、高音が綺麗にでた。

SJは僕の歌を聞き始めたとき、彼の頬に涙が伝って零れ落ちていった。

その、涙を拭おうともせず、SJは僕に見入っていた。



僕が歌い終わると、SJが僕に微笑んでくれた。

「……ありがとう、ジョン」

「感動的だったわ……それに、勇気がでたわ」

SJの瞳に強い意志が現れていた。

以前のような鋭い眼光が戻ってきた気がする。

SJは涙を拭うと、僕に言った。

「ジョン。あたし、きっともうすぐ消えるわ」

僕は驚いてSJの顔を見た。

「消えるってどういうこと? 死ぬの? 嫌だよ、そんなの」

うふふ、と、SJは意味深に微笑した。

「あなたとアリスに出会えて、本当に嬉しかった。あの写真集を残せて悔いはないわ」

SJはあの事件以来、やせ細っていた。

僕は、SJが癌に侵されているのかと推察した。

「……SJ……病気なの? 長くは生きれないってことなの?」

僕の身体が震えた。

SJは僕にとって、母のような姉のような存在だ。

大切な人だった。

SJは何も言わない。

ただ、僕をみて微笑んでいるだけだった。

そして、長い沈黙の後、SJが僕に言った。

「アリスを呼んでくれない? 二人を見たいの」

そういうと、SJは広大な海を見つめた。

雲間から降り注ぐ太陽の光がSJを映し出した。

僕は、このままSJが天に召されるような気がして、SJの腕を掴んだ。

「……SJ!」

SJが驚いて僕の顔を見た。

そして優しい母のような笑顔を僕にくれた。


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