若頭は旦那様!?

《7》








side/夢灑





紫陽花の葉から滴り落ちる雫が地に吸い込まれていく。


隠れていたカタツムリが顔を出すと、ニエルはグッと自身の鼻を近づけて匂いを嗅いでいた。





「…食うなよ、ニエル」



廊下を立ち止まり一応警告してみると、キョロっとこちらを振り返り、またカタツムリを見た。


ノロノロと動くのをジッと見ている辺り、石田に餌をもらっていないわけではないらしい。




安心してその場を去りながら、スズメの鳴き声がする淡い光を見上げた。



空はすっかり日が昇り爽やかな青色で、色の悪い雲はどこかへ消えている。


落雷のように地を伝った昨夜の轟音が嘘のようだ。





「いやっ、もっ、柊悟さん…!」

「……………霞が先に寝るからだろ」




障子から微かに洩れる声。



霞さんが怯えてしまうのではと心配していた反面、それでもっと自分に縋ってくることを期待していたであろう若。


しかしあんな李泱を見ても逃げやしなかった上に、雷にも怯えはしなかった。




自立していく後ろ姿が、自分から離れて行ってしまうように思えるのだろう。




「だって…っ、人が大勢いるここでできませんよっ……」

「俺への奉仕なら声は出ないだろ」

「っそういう問題じゃありません!」




……問題は、夜の不満にもあるらしいが。






「…若、霞さん、お目覚めですか?」




お目覚めですよね。


若なんて別の意味で目覚めてそうだ。





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