カーテン越しの君【完】

カーテン越しの君 /印象的な声

◆ ◆ ◆





「福嶋さ〜ん、体調はどう?」



養護教諭の呼びかけと共にカーテンが開き、いつしか入眠していた私は、先生のその一声で目が覚めた。



「あ、はい。大丈夫です」



ゆっくり身体を起こして右手の甲で目を擦り、先生が立つもう一方側のベッド方向に目を向けた。



すると、先ほどまで閉ざされていた筈の向かい側のカーテンは既に開かれていて、隣にいた彼は姿を消し、布団は綺麗に敷き直されていた。


きっと、彼は私が眠っている間に教室へと戻って行ったのだろう。


もぬけの殻化としたベッドを見た瞬間、先ほどの出来事がまるで夢だったのではないかという錯覚に陥った。





結局…。

彼に関する情報は上履きのマーク以外は謎めいたままで、印象的な声だけが耳に残った。



ただ、記録表に普通に名前を書いてくれれば、何の気も留めなかったのに。


情報を中途半端に残したままだから、私の頭は疑問と想像力が湧き立つ一方であり、カーテンの奥に塞ぎ込んでいた彼独特の世界は、まるで異空間のように感じた。

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