カーテン越しの君【完】

カーテン越しの君 /プライベートな時間

「いまから飴を渡すから、そっち側のカーテン開けていい?」

「それは、絶対ダメ。何があってもカーテンだけは絶対開けないで」


「何で開けちゃダメなの?」

「今はプライベートの時間だから」



セイくんは、自分側のカーテンが開けられる事を頑なに拒んだ。


私はセイくんのベッドのカーテンが開けれなくて、少し残念な気持ちだった。

でも、セイくんは芸能人だから、仕事以外では人と顔を合わせたくないのかな、とも思った。



「じゃあ、どうやってセイくんに飴を渡せばいいの?」

「今からカーテンの下に右手だけ伸ばすから、俺の手の平に飴を乗せて」



カーテンも開けずに下から飴をくれという彼の偏屈な態度に、少し可笑しく思った。


先に、渋々自分側のカーテンを少し開くと、セイくんの手首から先がカーテン下から伸びていて、手が受け皿になっていた。


だから私は、セイくんの言う通り、持っていた飴を彼の手の平に乗せた。



「はい、飴をどうぞ」

「サンキュー」



飴がセイくんの手元に渡ると、カーテンの向こう側に手がスッと引っ込んでいった。

セイくんは、指が細くて長くてキレイな手をしていた。

でも、なんか受け取り方に可愛げがない。



同じ学校の生徒とはいえ、芸能人である自分の素性を知られたくないから、やっぱり自分側のカーテンは開けたくなかったんだね。

仕方ないっか。


すると……。



「…この星型の飴」



少し掠れるようにポツリと呟いたセイくんに、私はすかさず返答をした。



「これは、歌が上手くなる特別な飴なんだ」

「え…。これは歌が上手くなる飴?」


「うん、昔、好きな人にそう言われて、この飴を貰ったの。とうの昔に歌を辞めた私には、この飴は勇気が出る飴として肌身離さず持ってるんだ。」

「ふーん、あんた歌をやってたの?」


「うん。でも、未だにこの星型の飴を持ち続けてるには理由があるんだ」

「…へぇ。その話、もっと詳しく聞かせてもらってもいい?」



初めて私の話に興味を湧かせたセイくんからは、ビリっと飴袋を開封する音が響いた。

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