それが罪だとしても…【完】

8章 普通の幸せ

 
「今度の休み、出かけるか」


それは、急な提案だった。
いつものように仕事から帰ってきた恭哉をなんとなくぼーっと見ていると、そんなことを言っている。


「え?」


聞き間違いをしたんじゃないかと思える言葉に、思わず顔を上げて聞き返した。


「だから土曜。
 どこか行くかって言ってんの」

「え、でも……」


確かそれは、あたしが誘拐されている身だから、外に出歩けないと言われていた。
だからあたしは、この部屋にいることを当たり前になっていたし、これからもその生活が続くものだと思っていた。


「いい加減、お前もこの部屋にいるの、飽きただろ」
「まあ……」


誘拐されてから、2週間。
一度逃げ出したあの日から、一切外に出ていない。


飽きたというか……
体がなまるというか……。

けど、決してそれが、苦痛なものではないのは確か。


「この2週間、様子を見てたけど、大丈夫そうみたいだからな」
「……そっか」


それを聞いて、少し複雑な気持ちになった。


大丈夫ということは、
やっぱりお母さんがあたしを探しているということがないということで……。


あたしはお母さんにとって、もういらない子なんだと思い知らされた。
 

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