それが罪だとしても…【完】

 
「悪い……」
「え……?」


包み込まれたものが、男の体であったと分かった時に、
耳元で囁かれた謝罪の言葉。


いったい何に謝られているのか……。


「もっと早くに……」


意味が分からなくて、
どうして男が悔いているのかも分からない。


あたしを誘拐した男。
だけどあたしを痛めつけようとか、傷つけようとかしているわけではなくて……。



「柚」



初めて呼ばれた、自分の名前。

ドキリと胸が弾んだ。


「俺はお前を誘拐した」


再度念を押すように、事実を述べる男。

体を離され、また鋭い眼光を向ける。



「だからお前は、
 俺の言うことを聞いていればいい」



99%の不安と
1%の安心感。



あたしは
身元も分からない男に誘拐をされた。
 

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