それが罪だとしても…【完】

 
今日連れてこられた場所は、数年前家を出て行ったお父さんのマンションだった。 

余命1年と宣告された父。
その最後の1年間、あたしと会う期間を与えてほしいと母に願い、残された遺産をあたしに相続させるという。

今日が、顔合わせの日。


「悪かったな。こんなところまで」
「全くよ。私はここでいい?」
「ああ」


お母さんは、久々にお父さんと顔を合わせたというのに、ずっと不機嫌顔。

それはそうだ……。
この人は、自分を捨てた男なんだから……。


だけどあたしの記憶の中では
お母さんはいつもお父さんが大好きで……。
仲のいい二人しか見たことなかった。


だから少しだけ感じる違和感。
でも……今のお母さんは、満さんがいるんだもんね。


「柚」


そのまま部屋に上がろうとした手前、グイとお母さんに手を引かれた。

そして一度、外に出され、部屋のドアが閉まる。


「余計なこと、絶対に話すんじゃないよ」


それは、もう見慣れてしまった般若のような顔をした母だった。


「分かってるよ」


あたしは、ただその言葉に頷く。
 

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