それが罪だとしても…【完】

4章 裏切り

 
「……」


夜、一眠りをして目を覚ました。

辺りはまだ暗闇に包まれていて、夜寝付いてから、まだたいして時間が経ってないと体が教えてくれた。

だけどトイレに行きたい衝動に駆られ、寝室の扉を開けた。
廊下から続くリビングの扉の隙間からは灯りが漏れていて、まだ恭哉は起きているんだと分かる。


トイレを済ませ、一度顔だけ出そうかとリビングへと近寄ったが、中から声が聞こえて、伸ばした手を止めた。


「ああ。ならいいんだ」


どうやら、恭哉は電話をしているらしい。
盗み聞きはよくないと分かっていても、ついその場に立ち尽くしてしまう。



「もし何かしようとするんだったら……母親を殺す」



背筋が、一瞬にして凍った。

いつもからは想像がつかないほど冷たい声色。
恐怖を覚える言葉。


「そうなっても、柚には一生黙っとくつもりだ」

「……」


カタカタと、体が震えていった。


今、恭哉が言った「母親」というのは、間違いなくあたしのお母さんのこと。
お母さんがあたしのことを詮索したら、殺してしまうというの……?
そしてそれを、あたしには言わないと……。

のうのうと何も知らず、あたしをこの部屋で生活させると……。


「……っ…」


襲ってきた恐怖で
あたしはその場でへたり込んだ。
 

0
  • しおりをはさむ
  • 172
  • 2474
/ 289ページ
このページを編集する