発情注意報!!【完】
14章 逃げ道
「さ…くら……?」
朝、一人机に向かって参考書と向き合っていると、頭上から声が聞こえた。
その声に耳を傾け、睨んでいた参考書を下げると、私の名を呼んだ彼女を見上げる。
「おはよう、美咲」
「おはよ…って、どうしたの!その格好!!」
肩をガッと掴んで、体全体を揺さぶらんばかりに問い詰める美咲。
朝からその力はきついわ。
「どうも別に。元に戻っただけだよ」
「元に戻ったって……。だってせっかく可愛くなったのに……」
美咲が嘆くのも無理はない。
美咲が問い詰めてくる前にも、ヒシヒシとクラスメートの視線を感じていたから。
私の格好は、メガネに三つ編み。
そう。
ちょっと前の自分に戻ったのだ。
切ってしまったスカート丈はさすがに戻せず、そこだけは他の子と同じくらいだけど、化粧っけもない顔に色気のないメガネ。そしてきつく編まれた三つ編みに、自分で言うのもなんだけど、昨日までの自分とは別人だ。
「どうしてまた……」
「……もう、意味がなくなったから」
「えっ……」
私の返しに、美咲もなんとなく感づいたらしい。
言葉を失った美咲に微笑みかけると、トンと背中を押して、自分の席へと促した。
今はもう、
勉強だけに集中していたい。
あらすじ
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総合ランキング9位獲得!(2019年07月)