黒華姫Ⅱ

「人脈」





学校からバイクで十数分。



着いたのは繁華街だった。




夜にはきらびやかな服を身に纏ったお色気お姉さんやどこか魅惑的なスーツ姿の男などが闊歩する、どこからともなく危険漂うあぶない場所となるここは、昼過ぎの今は仕事人間や学生のただの通り道。



その中央にある一角を曲がってすぐのとこに地下へと続く階段があり、そこを下るとふたつの扉があった。



どことなく危険な雰囲気を醸し出す赤い扉と、古めかしい茶色の扉。赤い扉にはcloseと書かれている。



結月の店は夜の営業だ。だから今は店にはいない。




「へー、ここ?閉まってるじゃーん」




幅が狭い階段の途中。私のすぐ後ろにいた千里がどーすんのーとぼやく。



心配ない。




「すぐ隣、家だから」



「ん?……あー、店主の家ってことね。華ちゃんたまに言葉足んないよー」



「伝わるならなんでもいいだろ」




茶色の扉の方に向き直る。インターホンがないので必然的にノックする形となった。




コンコンッ




……出ない。




コンコンコンッ




…………寝てるのか?




ゴスゴスゴスゴスゴスゴスゴスゴスゴスゴスゴスゴ……




バァンッ!!




「うるっせぇわボケェェェェ!!!」




ようやく扉が開いた、と顔を上げて…………



絶句した。




羨ましいくらいのサラサラストレートな長い髪、ではなく、見るも堪えないボサボサの髪。もうワカメが頭から生えてるのかってレベルでボッサボサ。前髪が顔を覆い尽くしている。サ◯コもびっくりヘアーだ。



かろうじて顎が見えたが、そこにはいつも綺麗に剃ってある短い髭がちらほらと。



更にびっくりしたのは、会う度にシンプルでオシャレな服を着ている彼……いや彼女もどきが変なキャラクターと吹き出しが描かれたよれよれのヘンテコなシャツを着ていたこと。吹き出しの中には「じゃがいもさんに恋してる」と書かれている。じゃがいもが好きなのか。



そして一番衝撃を受けたのは彼女もどきから発せられた男らしい野太い声。乱暴な口調。




「すいません人違いでした」




私はどうやら家を間違えたらしい。



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