だから私は貴方に騙される 上

あり得ない出会い /人生最悪の日

ついさっき、火葬場から帰ってきたばかりの私の元に来客が来た。

まだ喪服さえも着替えていない、腫れた目の私はアパートの玄関の扉を開けた。

「ーーー小村はるこさんのお宅でよろしかったでしょうか」

「そうですが………」

私の名前を知るこの人を私は知らない。

かなりの長身で背広からでもわかるがたいの良い、中年男性が1人と私より幾つか歳上だと思う長髪の顔の整った男性が1人。

この見知らぬ男性2人が私の家へと訪ねてきた。

「どちらさまでしょうか………」

知らない男の人が家に来ているから私は怖くなって、気持ち少しだけ扉を閉めた。

「………あぁ自己紹介がまだでしたね。わたくし、こういうものでございます」

長身の男の人が名刺を差し出した。

“名倉金融代表 名倉章”

「金融……」

「はい、あなたのおじいさん。小村社長にお貸しした金を返してもらおうと思いまして」

その言葉に私はこの、名倉という男の人を見つめる。

その言葉はおかしいんだもん。

だって、

「私………おじいちゃんの借金………全部返しましたよ……」

私のお給料、貯金、そして親子三代と住んだ家も。

「………だから借金なんて………」

おじいちゃんのホスピスのための治療費だって、全て私が払った。

だからあるわけない。

「ーーーそれがあるんですよ。借金が」

その言葉とともに私の二の腕がグッと掴まれた。

「きっと、知らないだろうからちゃんと説明しようと思いましてね。ほら、知らない人に急にお金を巻き上げるのは悪徳ですから」

二の腕を掴む力がさらに強くなった。

口では正論ぽいことを言っているけど、腕を掴む力がおかしい。

言ってることとやってることがかなり矛盾している気がする。

「………いや……離して!」

これはおかしい。

名倉の力に必死で抗って、ドアノブを両手で持った。

そしてそのまま内側に引こうとしたとき、扉に力が加わった。




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