だから私は貴方に騙される 上

あり得ない出会い /非現実的な日の続き

ーーーあれから3日。

名倉さんが私を連れに来ることも、あの人が来ることもない。

ただ仏壇には新しい小さな遺影が置かれていて、それが妙な威圧感を出していた。

「…………」

あの人といたら、何も疑わずに済んでいたのにこうやってお祖父ちゃんの前に来ると辛い現実に引き戻されたようで辛くなる。

けれど、終わったことにしてポーカーフェイスでいなければ。
忘れることのできない辛い事実にグッとくちびるを噛んだ。

その時、玄関の扉をノックされた。

「………はい」

今は喪中だから誰も来ないと思っていたのに誰だろう、とポーカーフェイスを保ちながら玄関の扉を開けた。

「喪中にごめんなさいね。小村さん」

「………あ…こんばんは………」

入居するときにしか見たことのない大家さんが玄関前にいた。

なんで大家さんがこんなところに……って思ったとき、大家さんがハァッとため息をついた。

「あなた、共同生活って言葉知ってるかしら?」

「………え」

「え、じゃないわよ。危ない人たち家に入れて………周りの人のこと考えた?」

大家さんはかなり強い口調で迫ってきた。

「ここはアパート。あなたの家じゃありません。みんなを怖がらせる事、このアパートの評価悪くしないでくれるかしら?」

大家さんが言っているのは名倉さんのことだと思う。
けど、大家さんの家はここあから歩いて10分くらい。
………なんであのこと…………。

「皆さんね、あの日、怖がって電話してヤクザさんが来てるわって。本当いい加減にしてちょうだい」

ハァッとさらなるため息をついてバッと右手を出してきた。




「家の鍵、返してちょうだい」

「………え?」

「退去のお金いらないから、今すぐ出て行って」

突然言われた台詞に私は目が点になる。

………なんで私……。

「ほら、早くしなさい!」

有無さえも言わせない大家さんに私は耳を疑いながら家の鍵を渡した。

「………最近の若い子は迷惑を掛けても謝罪ないのね」

「………あ………すみませんでした………」

私の言葉を聞いてすぐ、フン!と鼻を鳴らして大家さんは出て行った。



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