HEAVEN'S KISS Ⅰ【完】

「昴くん」


彼の背後で声を掛ける。


だけどその背中はなんの反応も見せないまま、


引き続き行き交(か)う車の流れを目で追っている。


「昴くん…?」


振り向かない。


「ねぇ…どうしたの…?」


声が届いていない。


「こっち向いて…?」


あたしは、遠慮がちに彼の肩に触れた。


その時。


「…るな」

「え?」

「オレに触るな」


その氷のような冷たい声に、あたしの体が強張(こわば)った。


「昴…くん…」


そして振り向いた彼を見て、息を呑(の)んだ。


その色のない瞳は、何も映していないようだった。

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