LOVE&BEAT


「もう着くぞ」


その声にハッとして、窓の外に視線を向けていたあたしはカーステレオのボリュームを下げた。


まだ耳に残ってるギターの甘くて切ない音の余韻をかき消し、慌てて笑顔を作る。


「うん」


せっかく今は2人でいるのに、こんな顔しちゃダメと言い聞かせながら。


車はやがて、校門の前でゆっくりと停まった。


まだ朝の早い時間だから、辺りに生徒の姿はない。


家から学校までの、たった15分間だけのデート。


彼を独占する時間は、もう終わり。


わかっているけど…


「里緒?」


いつまでも降りようとしないあたしに、運転席から声がかかる。


「キスして」


いつものセリフを言って見上げると、薄茶色の瞳が微かに細められた。

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