LOVE&BEAT

FAKE /祥子loves


向かいのソファに座る巧希は、さっきから何も言わない。


やけに大きく響く時計の音だけを、あたしは俯いたまま聞いていた。


あれから家まで送ってくれた巧希が、手慣れた様子でコーヒーを入れてくれた。


「ブラックで良かったか?」


「…うん、ありがとう」


いい香りに、気持ちが緩む。


「おいし…」


1口飲んで安心したのか、途端に我慢していた涙が溢れた。


ずっと胸につかえていて苦しかった塊が、一緒に流れていく。


「…ごめんなさい…」


小さく呟くと、「何がだよ」と優しく笑う巧希に、聞いてもらいたかった。



あたしの全て。



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