ホワイトデーには甘酸っぱいキスを 【完】

バレンタイン編 /火曜日







次の日も俺はわざと忘れ物をした。


今日は下敷き。


下敷きなんて、筆箱よりどうでもいいよな。



でも落合さんはそんな事、あまり気にしていない様子だった。




てか、何でまたいるんだよ。


俺が嫌なら、放課後さっさと帰ればいいのに。

ほんとに俺、自惚れそうだよ。






「神崎くんって、バカなの?」


「は?」




窓の下の壁にもたれながら、2人並んで座る。


いきなり、バカなの?ってなんだよ。





「いや、だって。いつも何かしら忘れ物するじゃん。」


「言っとくけど俺、こう見えて成績は良い方なんだけど。」


「うん。知ってるよ。」




落合さんに会いたいから、何かしら忘れ物してんだよ。

さすがの俺でも、こんなに毎日忘れ物しないって。


いい加減、気付けよな。



ふいに落合さんを見ると、冷たい目で俺を見ていた。





「何だよ、その軽蔑する目は。」


「いや、別に。」





何なんだ?

何考えてんだよ。






「落合さんはいつも放課後教室に残ってるけど、何してんの?」


「私はただ、放課後の教室の雰囲気が好きなだけだよ。」


「ふーん。本当は佐伯の席に座る為じゃないの?」


「何言ってんの。違うから。」






ふいっと落合さんは俺に背を向ける。


髪の毛が揺れて、落合さんのシャンプーの香りが鼻をくすぐる。






「なあ、佐伯のどこが好きなんだよ。」


「神崎くんには、言わないよ。」


「何でだよ。俺たち仲良しじゃん。」


「何処が。」


「キスした仲だろ?」






背中を向けていた落合さんが戻ってきて、また頬を赤く染めている。


まあ、キスしたって言っても、口じゃないんだけどね。


キスはキスだって、落合さんが自分で言ってたんじゃん。






「ははっ!落合さん、また顔赤いよ。」





思わず笑う。



ほんと、可愛いよ。



最近、俺の一言ですぐ赤くなってくれるよな。



たまらないよ、ほんとに。






「そんな事より、早く部活行きなよ。」


「落合さんが帰るなら、部活行く。」


「あはは。何それ。」





え?

落合さんが笑った。


びっくりして、落合さんを見つめる。




「な、何よ。」





あ、やばい。


そう思って、俺は落合さんに背を向けた。




初めてかもしれない。


あんな風に自然に笑ってくれたの。



いや、落合さんって宇野さんや佐伯といるとよく笑ってるんだけどさ、俺には一回も笑ってくれた事なんてなかったから。



あまりにも突然で、心臓がドキドキする。

こんなの、落合さんにバレたらやばい。





「神崎くん、とうしたの?」


「何もない。」


「もー。気になるでしょ。」





見られたくないのに、落合さんは無理やり覗き込んでくる。


うわっと思って必死に隠れるけれど、見つかってしまったっぽい。





「神崎くん、顔赤いよ。」




ふふっと落合さんの笑い声がして、俺は腕の中に顔をねじ込む。






「夕日のせいだし。」


「それ、私が昨日言ったセリフだからね。真似しないでよ。」





笑ってそう言う落合さんにつられて、俺もははっと笑った。




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