甘い甘いさくらんぼ【連載中】

第1章 /片付けられない女がいる



柔らかい日差しが眩しい。


道路脇にある白木蓮(はくもくれん)が一斉に色づいて、華やかな季節の到来を告げる。

今年は暖冬と言われたせいか、花が咲くのが早いし、この分だと桜も早咲きなのだろう。



あのマンションにいく途中、ぼんやりと思った。

角にある薬局を左折して、二軒目にあるマンション。

まあまあ新しくて、家賃も都会にしてはそれなりで、セキュリティーもしっかりしてる。

それから、風呂とトイレが別らしい。

俺にはよくわからないが、女からすれば重要だと言っていた。

でも「お前はそんなこと気にする資格ないだろ」と言ったら、あいつは急に眉を吊り上げて怒った。意味わかんね。


とりあえず、そんなマンションのエントランスを抜けて、

「おおー龍ちゃん、こんにちは」

「…ちは。おっさん、寝てねぇでちゃんと仕事しろよな」

「わしの仕事は夜が本業じゃからなあ」

「ギャンブルだろ、それ」

最近顔見知りになった守衛のじいさんと軽く会話してから、エレベーターに乗り込む。

8階のボタンを押して、しばらく待つ。


少しだけ心臓の音が大きくなってきて、ふう、と一度息をこぼした。



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