甘い甘いさくらんぼ【連載中】

第1章 /そうだ、こいつは馬鹿だった



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この間のDVDは案の定最悪だった。


素直になれない高校生の男女が、さまざまな困難を乗り越えて結ばれるというなんともテンプレート通りのもの。


なんでこんなのがヒット作なのかわからない。いつも似たようなものなのに。


でも、笑美が横で鼻水垂らして泣かなければ、もう少し集中できたのかもしれない。

少なくともヒロインの名前くらいは覚えられたと思う。


隣でズビズビと鼻を啜られては、集中できるものもできなかった。





バイトに向かう道すがら、そんなことを思う。



昨日、東京で桜の開花が発表された。


とはいえ大学の近くの桜並木は、蕾も固そうでまだ満開とは程遠い。


別に花見がしたいとかそんなことは思わないが、日本中に桜が咲く様子は毎年見応えがある。

ここが一面ピンクになれば、笑美が大喜びすることが容易に想像できて笑った。





「せんせーい!」

「痛ぇ、突進してくんな」


バイト先の個人塾に着くと、後ろから思いっきりぶつかられた。

後ろを振り向くと、数学を担当している中2女子がニヤニヤと笑っている。


「花井、毎回思いっきりぶつかってくるんじゃねぇ」

「だって先生見えたからー」

「あほ、理由になってねぇよ」

花井は中学生の中じゃませたグループに属していて、すぐ彼氏と喧嘩したとか、クラスのやつに告られたとかをベラベラ喋ってくるやつだ。



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