甘い甘いさくらんぼ【連載中】

第1章 /その日は厄日だった

大学2年の6月だったか7月だったか、大学の悪友である悠二といつもの居酒屋で飲んでいた。

個人経営のそこは、まあまあ小綺麗で料理も旨い。

髭面の親父が作っているにしては。


実際20歳になる前から通っているけど、このおっさんはそんなことを気にも留めない。
大人としてどうかと思う。

でも何故か人気店で、サラリーマンから若い女まで様々な客が来る。


その日も、悠二と飲みながら他愛のない話をしていた。



「龍、お前文学部の子に告られたってまじ?」

「はあ?誰それ」


男同士の会話っていうものは、高校生も大学生も大して変わらない。

経済学部の誰々が可愛いとか、部活の後輩で狙ってる奴がいるとか。


「お前なー、告られた子の顔とか名前とか覚えてないのかよ?かわいそう」

「………」

そう言われて、頑張って記憶を辿る。


最近告られた女、ああ、あいつか。

なんだっけ、斎藤だか佐藤だかそんな感じの。

急に呼び出されて告白されたのに、学部なんか覚えてられるか。


「わかんねー」

「マジかよ。お前、そんなモテるのにひでぇ奴だな。どこがいいんだかこんな男」

悠二がやれやれと言った具合に肩をすくめてみせた。

とりあえず「うるせぇよ」と言い返しながらビールを煽る。



0
  • しおりをはさむ
  • 13
  • 546
/ 38ページ
このページを編集する