アナタの羽ばたきが世界を救う。

アナタの羽ばたきは世界を救う。序章 /菖蒲綾女

2000年1月20日

タイムスリップしてアリスがまずやるべき事は、すでに研究者によってプログラムされていた
ピュロスを使ってネットでアリス・ディアスが2000年に存在している事を証明する作業を開始しなければならない
母親が日本人で、日系人のロバートの子であるアリスは、容姿は確かに日本人と言うか東洋系であるが、名前はそのままと言うわけにはいかない
「日本人っぽい名前じゃないとか」
辞書を検索する
アリスを有栖や有住と書いてもいいが、それだと苗字になってしまうようだ

アリスはまず弓備城の街を歩いてみる事にする
自分に似た東洋系の人ばかり居る街、そして本やネットで読み得た知識の建物を間近に見て、ここが今までいた世界とは違う世界である、タイムスリップした先である事を再認識する

郊外にある大きなお城、そしてその奥にある山と公園
麓にはこれから受験する高校
未来から来た自分が高校に入ってしまって、本来この学校に通うはずだった人は、どうなってしまうんだろうと考えるが、全ては未来の為だと、少し心を痛めながら校門の前を通る

それからしばらく歩くと、街のメインストリートに商店が建ち並んでいる中に、緑と色彩豊な花達が、まるでショーをしているかのように鮮やかに咲き誇っている
アリスは一瞬でその場所に目を奪われる
花屋のようだ
「flower mansion」
アリスが花の中にある看板を見つけると自然に声に出してその文字を読む
「素敵な発音ですね」
と中から店員であろう熟年の女性が、アリスに声をかける
「…あっ……ワタしわ……」
咄嗟の事で、日本語の発音が上手く出来ない
「あら、外国の方?」
「いえ……外国が、なががっかったので」
「ん?あぁー外国暮らしが長かったのね」
「はい」
ふと目に留まる美しい薄い青紫の花
「これは?」
「カンザキアヤメって言うの。冬に咲くアヤメは珍しいでしょ?あっアヤメって言うのは、アイリスの事ね」
「…アイリス」
自分の名前に響きがよく似た花
「私も…アヤメって言うです」
「そうなの?だから引かれたのかしら?一輪差し上げますよ」
「いま、お金、ないから」
「いいのよ、貰っていって」
女性からアイリスを受けとるアリスは、心が晴れるように明るくなって行くのだった

アリスは、漢字を調べて名前を菖蒲(アヤメ)にしようとした、しかしピュロスの助言で菖蒲(しょうぶ)という苗字がある事もあり、苗字を菖蒲(しょうぶ)名前を綾女(アヤメ)と書いた
のちに菖蒲(しょうぶ)は菖蒲(あやめ)と同じ漢字の別の花の名前と知るのだけど、アリスは、いや綾女はそれでも満足だった

自分は今日から菖蒲綾女だ
新しい存在なんだ
未来を帰る名前を手に入れたんだと
希望を持ち、進む事が出来た

しかし実際はまだなし得ていない

甲塚陽介は、死んでしまう

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