アナタの羽ばたきが世界を救う。

アナタの羽ばたきは世界を救う。本章 /弁論大会

2000年4月7日 金曜日
弓備城高校 入学式

初めての高校への登校日
綾女の周りの生徒は目を輝かせて、高校生活の初日を迎えている
式が終わり、それぞれの教室に別れると、みんな緊張している
眞藤泪は、身体を強張らせ
花屋敷夏蓮は、その泪を気にしている
甲塚陽介は、不機嫌そうに目を閉じて
緑山崇は、真剣に前を向いて先生の話を聞いている
五十嵐千早は、ニコニコと笑顔を振りまいているが、それを見て陰口を言う生徒の声も耳に入っているだろうに、笑顔を絶やさない
剣崎剛志は大きな身体を机に押し込むように、小さくなって目立たないようにしている
……目立つけど
そして尾崎葉子は、平然として前を見ている

あぁ
最初はこんな感じだったな、と綾女は思い返していた
入学式まで戻った事は今まで1度もない
その必要を感じなかったからなんだが、もう3年前の出来事なんだと、ひどく懐かしかった

「さて、高校の新生活に向けての抱負や夢なんかを弁論形式で発表してもらいますので、月曜日まで提出して下さい」
担任の中尾先生がそう言うと、クラスが少しざわつく
もっと後にこれが発表されたら、もっとみんな騒ぐんだろうけど、今日は初日だ、まだ緊張しているみんなのリアクションは薄い

弁論大会は、夏蓮が全校生徒の前で発表する事になっている
と言うか、綾女が棄権したおかげで夏蓮が発表する事になったんだ
「弁論かぁ」
確か当たり障りの無い文を書いて提出したんだ
主義も主張も無い綾女が全校生徒の前で話すことなんて………

「あっ」

前の世界での葉子との会話を思い出す

「だって、未来から来たのは、あなただったんだよ、アリス。アリスがこの世界で生きる事に意味があってそれが未来を、世界を救う事に繋がるんじゃないかなって」
「私がここで生きる意味?」
「たぶんだけど、その為にピュロスはあなたを過去に送った、あなただから、アリスだから感じている事、あなたが素直に感じてる事があって、この世界との違和感が大切なのかも」

「私が、皆に言いたい事……」

自分とこの世界との違和感
みんなに伝えたい事
みんなに聞いて欲しい事

今はある

同じ時間を繰り返している自分だからこそ、伝えたい事がある

それを全校生徒の前で話せれば

いや、前と違う事を書けば、そもそも選ばれない可能性だってある
間違えるわけには………


でもそれが普通なんじゃないの?

自分は未来を知っているから、そう考える

けど、未来を知らなければ、ここで一所懸命に努力をして、弁論を通して伝える努力をするのではないのか?


ピュロスの論理
今を作る要因は過去の出来事だけでは無く、未来の出来事も関係があると

だから今、自分自身が努力をするべきなんではないのか
綾女はそう考えた

未来は決まっていない
過去がどうであれ関係ない


今の自分が伝えたい思いを

それでも、自分よがりではいけない
ちゃんと伝わる言葉選ばなきゃいけない
自由に書くことは、好き勝手書くことではない

自分の過去の経験、この世界で経験した未来の経験も自分の過去の経験なんだ


綾女は、一心不乱に書く綴った

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