アナタの羽ばたきが世界を救う。

アナタの羽ばたきは世界を救う。本章 /私の羽ばたき

冷たい風が校門を吹き抜けていく
まだ寒い季節
あの真夏の暑さがこの学校を包む季節はまだ先だけど
今までの世界と何か違うことがあるのだろうか
「綾女さん」
誰かが綾女を呼び止める
こんな事は前はなかった事だ
振り返って声の主を確認すると、そこには葉子が、息をきらしている
走って来たのだろうか
「どうしたんですか?……葉子……さん」
そこに居たのは葉子だった
綾女は、いつも呼び捨てで呼んでいたが、まだ学校は1週間だ。本来なら尾崎さんと言うべきなんだろうが、それに完全に不意だった為に、「さん」と後付けになってしまう
「えっと…あー葉子って呼んで、家が堅苦しいせいで、学校だけでも、息抜きたいし」
「うん、何か用ですか?」
「用ってほどじゃないんだけど、綾女さんが帰るのが見えたから、一緒に帰りたいなーって」
「えっ!?」
意外だった
葉子はいつも一歩引いたようにクラスメイトを見ていた
今にして思えば、九尾の復活を止める為に、復活の引き金になるような出来事に敏感で、常に緊張感があったのかもしれない
その葉子が自分から話しかけてくる
もしかして、テンコや九尾の事で!?
入学式の時、今まで見えていなかったテンコが見えるようになっている事に気づいた
たぶん前の世界で、テンコと出会って話をしているからだろう
自分が見えている事にテンコが気づいたとなれば、葉子から話しかけてくるのもわかる

………ところが……

テンコが葉子の周りにいない

「ダメかな?」
葉子は笑顔を見せる
今までの世界の葉子なら、したたかに何か策略を練っている時に、笑顔を見せていたけど、それとは何かが違う
「ダメじゃないですけど……」
こちらからテンコの事を聞けば、警戒されてしまう
葉子とは、普通の友達になれたらと思う綾女は、それを聞く事に抵抗がある
歩きだすと、葉子は一度大きく息を吸い、覚悟を決めたかの様に話始める
「弁論大会の……綾女さんが言いたかった事………私、ちょっとわかる気がしたんだよね」
「…え…」
葉子の言葉に、胸がきゅーっと何かに捕まれる
「こんな話、信じてもらえないかもしれないけど、私の家って双弓神社っていう神社やってるんだけど……うーん…なんて言えばいいか……昔から決められた仕来たりみたいな儀式があって、それの巫女をやる事になってるんだけど」
綾女はハッとする、九尾の封印儀式の事だ
「それが今年の事だから、ずーっと悩んでたんだけど」
「悩んでたの?」
「うん……あっでももういいの、綾女さんの話を聞いたら、スッキリしちゃったから」
「えっ!?」
「家の儀式は儀式で、もちろんちゃんとこなすよ。でも学校までそれを持ち込まないで、いいんだって思えたの」
葉子は真面目な女の子だ
前の世界も、ずっと封印の儀式の重圧と戦い、封印の事を気にしていて、学校生活はままならなかったのだ
「儀式は儀式、学校は学校。綾女さんの話でそう思ったの。だから友達になりたいなーって」
晴れやかな葉子の笑顔
こんな葉子の表情は見たことがない
「綾女さん!!?」
葉子が綾女を見ると、驚く
「どうしたんですか?」
「だって……涙が出てるよ」
「ん?」
言われてみれば、視界がボヤけて、頬に涙が流れ落ちている
「どうしたの?私なにか変な事を言った!?」
「違うんです、大丈夫です………あれ……おかしいな……涙が止まらない……」
ポロポロとこぼれ落ちる涙
「嬉しいです、葉子……でも私……話さなければならない事があります」
「えっ!?何!!?」
「…葉子……私は………」


その日から、葉子と綾女は絆が生まれた
綾女は、この世界での親友と出会う事が出来たんだ

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