アナタの羽ばたきが世界を救う。

幽愁暗恨 /出会いと運命

「あのさ、千早」
「何?」
「お前、よく前世がどうのっていうじゃん。本当にそう思うか?」
「生まれ変わりの話?運命の話?」
「どう違うんだよ」
「えっとねうちの宗派じゃ、娑婆での縁が切れたら…あっこの世で死んだらって意味だけど、お浄土で生まれて仏になる、お浄土はキリスト教で言う天国になるのかな……だから先に亡くなってしまった人は、仏になって私達を導いて、見守ってくださってますよって」
あー千早スイッチが発動したよ
千早は普段はニコニコして、みんなを見守っている感じで主張はあんまりしないが、スイッチが入ると急に細かくなる
この説明も長くなるんだろうな……
「そもそもこの世を娑婆って言うんだけど、その意味は「苦しみに満ちた堪え忍ぶべき世界」、だから魂が生まれ変わる輪廻転生は、いい意味では無いんだよ」
「苦しみの世界にまた生まれるからか」
「人を恨んだり、未練があって死んだら、あの世に行けないって言うじゃない?」
「そうだな」
「僕はその浄土に生まれ変われず、輪廻転生も出来なかった人は幽霊になったり、妖怪になったりすると思ってて、その幽霊や妖怪が生まれ変わってまた人として娑婆に生まれて、娑婆での行いでお浄土に行けるようになるのかなって」
それを「うんうん」と声を出して納得する剛志
「じゃ前世とか運命とかってのは」
「それは宗教上の話じゃなくて、都市伝説かな」
「そんな都市伝説の話、俺知らないぞ」
「えっとね、カウンセリングで退行催眠術でトラウマを植え付けられた記憶を呼び起こして、原因を探って良い印象を持たせてトラウマを解消するって方法があるんだけど、全然違う記憶を持ってる人が居たんだって」
「違う記憶?」
「水を怖いトラウマを持ってた男の人なんだけど海の無い所に住んでるのに、海で溺れた記憶を持っててそれがトラウマで水が怖かったとか」
その話に剛志がのってくる
「生まれ変わる前の記憶なんじゃないかって」
「TVとか映画で見たのが強く印象に残ったとかじゃねーの!?」
剛志は千早に助けを求めるような視線をおくる、すると千早は説明を続ける
「その疑いもあったんだけど、別の男性の患者でも退行催眠で前世と思われる記憶に辿りついた事があって、また別の女性の患者も前世の記憶が出てきた時に、男性と同じ「時」を過ごしている記憶だったんだって」
「しかも記憶の中で恋人同士なんだよ」
「二人は別々にカウンセリングを受けている患者だったから、カウンセラーも出会わせたりはしていなかったんだけど、結局知らない所で出会っていて、結婚する時に報告を受けたんだって」
「へースゲーな」
といつの間にか学校の下駄箱
「気づかない?」
「何が?」
「前世で恋人同士だった、現世でも恋人になった」
「あー」
「前世の記憶を紐解いていくと、現世でも何らかの縁があるんだって」
「だから花屋敷と眞藤と甲塚は前世からの縁があるって言ったのか」
「そう言うこと」
階段を上がろうとすると、後ろからバタバタと音のわりに疾走感の無い女子が追い抜いていく
さっきから話題に出ている眞藤泪だ
今の眞藤と来る時に会った花屋敷が友達で、花屋敷と甲塚陽介っていうのが幼馴染み、そして眞藤は甲塚を好き………なんだ

もし千早の言う通り、前世でも縁があって、現世でも……縁があるなら
……俺は甲塚に敵わないのか
確かに剛志の言う通り、俺は眞藤に引かれてる
でもいいなって思うだけで、どうしたいとかないし、告白したいとかもない
ただただ気になっているだけだ

0
  • しおりをはさむ
  • 5
  • 0
/ 126ページ
このページを編集する