アナタの羽ばたきが世界を救う。

一樹乃陰 /キツネ

「今日は授業をやめて少し夏休みのイベントを考えてみようと思う」
2時限目、日本史担当の小野沢先生が入ってくる
「日直、号令はいいぞ。えーと我が校には地元では有名で、全国的にまったく知られてない成富陸奥護郎と所縁があるのは皆知ってるな」
タイムリーな話題
このタイミングで街の歴史を聞けるのは、ありがたい
「五十嵐の家のお寺「天双寺」と尾崎の家の「双弓神社」は古い歴史があって、成富陸奥護郎とも縁のある家……だよな、尾崎、五十嵐」
小野沢先生が話を振ると、尾崎さんと千早は軽く会釈する
「そして弓備城(くびじょう)、もちろん成富陸奥護郎の所縁の城だ。で夏休みは自由研究として、みんなに二人以上の班を組んでもらい街の歴史をまとめてもらおうと思う」
これは一石二鳥だ
前世の記憶を紐解く手掛かりと宿題がいっぺんに終わるなんて
「例えば…」
先生は大きく弓備城と黒板に書く
「この街はこの漢字で「くびき」って読む、お城の名前は同じ漢字で「くびじょう」。これには伝説があるし………」
先生が話を続けているのに、頭に入ってこない

急激な頭痛
あれだ
前世の記憶が甦ってくる時の感覚

僕の目の前には惨劇の舞台が開かれる

くびき
くびじょう
兜塚公園

そうだ
公園の幽霊は、頭しか無く、首だけで宙をさまっている
主に反乱した武将の首斬り場だったから、ここは「くびりき」から「くびき」って呼ばれる様になったんだ
そしてそこに立つ城、「くびじょう」
千早が前に教えてくれた弓備城の由来は「弓を備える城があったから」って言ってたけど、それは当て字

そうだ
僕らはそこで斬首されたんだ

城の主が居て、僕達は反乱を起こした
僕らに分があったはず
そうだ
僕らの中に本当に城の主となるべき人がいた
名前
名前だよ
思い出せ名前

でも待って
兜塚公園には、幽霊がいる
あれが最後の9人目の仲間!?
まだ生まれ変われていない?
じゃあ僕の仲間が死ぬのは、公園の幽霊が生まれ変わった後!?

いやいやちょっと待って
斬首されたんだ
9人皆死ぬんじゃないの!?
まだ一人生まれていないなら、今いる8人は皆死ぬんじゃないの!!?

怖い
僕は急に冷や汗をかきはじめる
周りから見たら、夏の暑さで人より汗をかいてるように見えるかもしれない
視線を上げて黒板を見る

ゾクッと今度は冷気を感じる
僕はある者と視線が合ってしまう
尾崎さんのキツネだ
尾崎さんは前を向いて授業を受けているけど、キツネは尾崎さんは肩から首を出し、こっちを見ている
完全に視線が合う
僕はそれを外す事が出来ない
キツネに表情があるかわからないけど、こっちを見ているキツネはニヤリと笑っているように見える
キツネ
なんで尾崎さんにとり憑いているんだよ
なんで僕を見て笑うんだ
金縛りにあったように、キツネから視線を反らす事が出来ない

キツネの口が動く
何かを喋ってる
まさかあり得ないだろ、人の言葉を話している様に口が動く
すると、ゆっくりと尾崎さんが振り返り、僕を見る
確認する様に、威嚇する様に、ゆっくりと、ゆっくりと視線を僕に合わせてくる
生きた心地がしない
このキツネなんだ、尾崎さんを操っているのか?
もう尾崎さんは僕が知ってる尾崎さんじゃないのか!?

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