アナタの羽ばたきが世界を救う。

一樹乃陰 /生まれ変わり

「千早~ちょっと来てー」
いつもなら休み時間になれば集まる崇の席で、千早を呼ぶ
「今日はあと一時限で帰れるねー」
と出来るだけ高いテンションで、僕は二人に話しかける
でも崇は、ボーッとして、千早も何かを不安がっているのが、よく分かる
そういえば尾崎さんも菖蒲さんも眞藤さんいない
甲塚くんも伏せってしまって、花屋敷さんも元気がない
何か、本当に何か何か分からないけど、運命の歯車が回り出した様に思える
「タカくん………あのさ」
暗い雰囲気の中、千早が話し出す
「なんだよ」
「いや……あのね……」
「ん?」
崇がそれを突っぱねる様に返事するもんだから、千早が黙ってしまう

ガラッと静寂を破ったのは、教室の前のドア
眞藤さんが戻ってくる
「………タカくんが怒ることじゃないよ」
と千早がぼそりと口にする
たぶん崇が不機嫌なのは、好きな眞藤さんを甲塚くんがビンタしたからだ
「俺が何を怒ってんだよ」
「さっきの……眞藤さんと甲塚くんの事…関係ないんだから」
「は?関係ない??千早はクラスの誰かがイジメられても無視すんのか?」
「でもあれは……痴話喧嘩だし……」
崇はそう言われて反論出来ない
相手が千早じゃなきゃ、崇は暴力を奮っていたかもしれない
でも僕にはわかっている
崇や千早、それに眞藤さんや甲塚くんが悪いんじゃない
何か歯車が回り出した
良くない歯車
それはわかっている
「僕もそう思うな。崇や千早が誰かに傷つけられたら絶対に、そいつは許さないよ。でも眞藤さんと甲塚くんはじゃれてるだけなんだからさ」
笑いながら僕は二人にそういう
「崇は眞藤さん好きだからな、片想いはつらいねー 」
と少しふざけると
「そうなの!?」
と千早も切り替えて、のってくれる
「俺はやれる事はやる」
崇は黙ってしまう
「3人でじゃダメ?」
また明るく言ってみる
「……いや、忘れよう。きっと明日は元に戻ってるか」
崇は明るく答える
「二人が言うように、俺が気にすることじゃねーわ」
「だよね」
崇とハイタッチする僕

絶対に僕が守る
だから崇、安心して
千早もそんな顔しないで

謎を解いて
みんなの命を守るのは僕の役目なんだ

休みの時間が終わるチャイムが鳴る


4時時限目、数学の時間
僕はもう一度「首斬り妖狐と梓弓」を読み直す
読みながら、後ろを振り向き千早に話しかける
「ちょっと聞きたいんだけど」
「授業中だよ」
「あのさ、尾崎さんの家のキツネって名前あるの?」
「えっ祀ってるキツネの事?」
「うん」
「名前知らないけど、あぁ尾が9本じゃないって言ってたよ」
知ってる尾崎さんの隣にいるキツネは尾が4本だ
だから悪さをしていたあの九尾「明」では無い
でも蘭も尾は6本だから、この本のキツネと尾崎さんのキツネが一緒とは思えない
この本のキツネって言うのは比喩だと思うけど、実際に尾崎さんにはキツネが憑いているんだ
無関係とも思えない
「あのね、タケくん言いにくいんだけど」
「何?」
「みんな葉子の事、おざきって言うけど」
「ん?」
「本当は、おさきなんだ」
「えっ!?」
「濁点つかないんだよ」
「じゃあ、おさき……ようこって言うの!?」
「そうだよ。タケくん覚えてあげてね」
僕は絶句した
おさきようこ……だって………
尾裂き妖狐
まさか

蘭か明の生まれ変わりが……尾崎さんなのか

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