アナタの羽ばたきが世界を救う。

怪力乱神 /迫る九尾の気配

一時限目の休み時間になると私は図書館に向かった
弓備城高校の図書館には郷土資料が豊富で、綾女さんが読んでいた古い本の様な本がたくさんある
「あの子が読んでいたのは、下巻だ。どこかに上巻があるはずだから、それを探そう」
テンコが言うには、あの本「首斬り妖狐と梓弓」は上下巻の本で、上巻には御先稲荷の明が、九尾の妖狐になるまでが書かれていて、綾女さんが読んでいた下巻には、封印の方法が書かれている

事務員さんに、郷土資料の棚を教えてもらい、本を探すんだけど、上巻はどこにも見当たらない
「下巻があったんだから、必ずあるはずだよ」
テンコの意見に私も同意する
しかし本は見当たらない
すると、私が調べている棚の隙間から向こうの通路が見え、男子生徒が同じように本を探している
「あっ」
その男子と目が合い、私を見て声を出す
「尾崎?珍しいな、お前が図書館なんて」
棚越しに声をかけるのは、同じクラスの甲塚陽介くんだ
「家の調べ物でね、甲塚くんは?」
「あー成冨の弓と九尾のキツネの本探してるんだ」
まただ…緊張で表情が強ばる
テンコも一緒みたい
「なんでそんな本を?」
私は緊張がほぐれないままの声で、甲塚くんに訊ねる
「成冨陸奥護郎の事を調べているんだ」
「甲塚くんが?意外ね」
「そうか?結構前から興味あったんだよ。伝記も読んだしな」
「九尾のキツネと成冨陸奥護郎って関係があるの?」
知っている事だけど、知らないふりをして聞いてみる
「そういう文献があるって聞いた事があんだよ。って言うか、尾崎って成冨陸奥護郎の子孫なんだろ?」
なんでそんな事まで知っているの?
「葉子……明の気配を感じる……この子から」
甲塚くんから!?
テンコの忠告を聞きながら、甲塚くんを注意深く観察して、話を続ける
「よく知っているね。苗字が違うから、気づく人はいないって思ってた」
「じゃあさ、成冨が江戸時代初期の弓備城一揆の主犯って知ってるか?」
いきなりご先祖を悪く言われると気持ちのいいものじゃないって、甲塚くんはわかんないのかな
「そういう話もあるって事でしょ。弓備城の主が滅んで、成冨の子孫が残ってるって昔の人が知ったら怒っちゃうかもね」
どうでもいいことだ
作り話なんだし
だってその一揆は九尾が仕掛けたことで、弓備城の真藤家の命令で、九尾を封印した成冨の弓を使った巫女と成冨家の人間が縁を結んだだけの事、ちなみに真藤家は九尾が子を根絶やしにしてしまったから、跡継ぎが居なくなってしまったんだ
妖怪の事を書けない正史の文献には、一揆として書かれているだけの事
「尾崎は、なんで滅んだと思う?」
「さぁ、一揆だから討ち死にとかじゃないの」
「俺はさ、九尾が関係があるって思うんだ」
甲塚くんは、やや興奮ぎみにそう言う
「妖怪が本当にいるって、ははは。甲塚くんって子供みたいな事言うんだね」
「そうかな」
「なんか千早っぽい」
作り笑いをしながら、九尾の事を否定する
時計を見ると、休み時間が終わりそうだ
本を探す時間を失ってしまった
甲塚くんが居なきゃ………

「さっきの甲塚って子から、明の気配を感じた。葉子……もう覚悟するしかない」
二時限目が始まる
テンコの表情は険しくなって、尾はいつも以上にユラユラと警戒するように揺れている
「今すぐ公園に行こう。封印の結界を調べる必要がある」
「でも、もう授業が始まって」
「そんな事はどうでもいい」
「そんな事って、私は普通の高校生なんだから」
「今更どうしたんだよ。葉子の力が必要なんだ。運命なんだよ」
「運命って気安く言わないで」
たぶん私はパニックになっている
本当に九尾の封印が解けてしまう事なんて、信じてただろうか
今日の儀式が終われば、50年後の儀式までは平和に暮らせるはずだった

0
  • しおりをはさむ
  • 5
  • 0
/ 126ページ
このページを編集する