長州の闇と謳われ暗躍する少女が一人。冷めきった心に求めるのは陽の光だけ。長州と新撰組の狭間で揺れるその心を溶かし包み込むのは一体誰なのか…。運命の物語がここに。






「黒い猫」









それは私の別名。







誰よりも美しく誰よりもしなやかに夜を纏う者








そんな意味が込められていると誰かが言った。







その名が大嫌いで、どこかに捨ててしまいたいと願った。







私は黒なんかではないと、黒には染まらないと思い込んでいたかった。








もがいて、苦しんで、涙も枯れた頃、諦めかけた運命が回りだした。








歴史という大きな大きな運命が。








そして、彼は教えてくれた。










黒猫は幸運を運ぶ幸せの猫であると。