Rhapsody in Love ~幸せの在処~

第2章 幸せの在処 /8 お見合い

 
 
 
「今度の連休には、必ず、必ず、帰ってくるのよ。お母さん、あなたの顔が見たいから。」


 4月からの新しい生活の慌ただしさが、ようやく落ち着く5月に入って、母親の喜代美から、そんな電話を受けた。
 いつもならば、何かしらの理由を付けてその難を逃れるのだが、今回ばかりは喜代美から命令されて、半ば強制的に帰省させられた。

 親戚の法事などの予定は聞いていなかったので、電話をもらった時から、みのりは嫌な予感がぬぐえなかった。
そして帰ってみると、案の定――、

そこには「お見合い」が用意されていた。

 予想していたこととはいえ、だまし討ちのようなことをされて、みのりは釈然としなかった。

 どうして、そっと見守っていてくれないのだろう。
 どうして、我が子とはいえ、人の人生にどかどかと土足で踏み込んでくるようなことをするのだろう。

 お見合いならば、以前一度だけしたことがある。その時は、まだ大学院を出たばかりで、大学の教授の紹介で得た県立史料館のアルバイトの仕事しかなく、実家にパラサイトしている状態だった。
 その時と今とでは、状況が違う。猛勉強の末、採用試験に合格し、れっきとした一人前の教諭となった。敢えて結婚をしなくても、独りで十分に生活していける。

 「結婚、結婚」と連呼する喜代美は、みのりが結婚をすれば本当に幸せになれると思っているのだろうか。それよりも、みのりに子どもを産ませて孫を持つことで、自分の人生が完成されるかとでも思っているように、みのりには感じられた。

 
 

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