Rhapsody in Love ~幸せの在処~

第2章 幸せの在処 /11 恋の正しさ



 秋も深まり、花園予選の熱い戦いが繰り広げられる季節となった。
 吉田高校のラグビー部は、難なく1回戦を勝ち上がっていたけれども、みのりはセンター試験組の土曜学習会が入っていて、応援には行けずじまいだった。

 純粋にラグビーのことは好きだし、試合を観戦することは楽しいとは思う。
 でも、ラグビーの試合を、この花園予選を観ると否が応でも遼太郎を思い出してしまう。

 1年前の花園予選は、遼太郎への想いを確認する過程みたいなものだった。

 闘う男の目をする遼太郎に、恐れをなしたこと。
 流血し焦る遼太郎を、抱き締めて宥めたこと。
 そして、遼太郎のドロップゴールに心を貫かれたこと。

 そんな思い出は、今のみのりには辛いだけのものだ。

 3月の終わりに遼太郎に別れを告げてから半年以上が経とうというのに、みのりは立ち直るどころではなく、その心はあの時のままだった。少しでも遼太郎が過るだけで、息もできないような痛みに突き上げられる。

 3年生のラグビー部員からは、再三応援に来てくれるように頼まれてはいるが、もう少し、この赤く腫れ上がった心の状態が癒えないと、競技場へ足を向けられそうになかった。



「みのりちゃん!」

 清掃指導が終わり職員室へ戻る途中、生徒が多く行き交う渡り廊下で、名前を呼ばれた。今、この学校でこんな風に呼ぶのは、一人しかいない。

「ああ、愛ちゃん。元気そうね。花園予選はどう?みんな練習頑張ってる?」

 昨年、兄の二俣が勝ち進んでいく過程は知っているだろうが、今年は愛にとって、ラグビー部員として初めての花園予選だ。


「はい。頑張ってると思います…。多分……。」

 さぞかし愛が張り切っているとばかり思っていたみのりは、彼女の歯切れの悪い受け答えが気になった。それに、いつも目にする快活な愛の表情ではない。




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