Rhapsody in Love ~幸せの在処~

第2章 幸せの在処 /2 遊園地 Ⅰ

 約束の時間が迫っているのに、みのりはなかなか着ていく服が決まらなかった。そう沢山の洋服を持っているわけではない。いつもならば、パッと思いついた服を適当に着ているのだが、今日は変に考えてしまって、着てみては脱ぐの繰り返しだった。

 こうなってしまう理由は解っている。遼太郎に似つかわしい自分でいたいという欲が、判断力を鈍らせているのだ。思い切って若ぶった服を着ても浮いてしまうし、いつものような格好をすれば、遼太郎とあまりにも釣り合いが取れない。
 そもそも12歳も年上なのだから、服を変えたくらいで遼太郎に似つかわしくなれるはずがないことも分かっているのだが、それでも少しでも…と思うのが恋心というものだ。


 結局、最初に考えていたように、コットンのセーターにハーフパンツを合わせ、カジュアルなスプリングコートを羽織った。部屋中に散らばった服たちは、片付ける暇などないので、そのままにして出かけることにする。

 バッグを持ちブーツを履いたところで、玄関のチャイムが鳴った。
 ドアを開けると、恋しくて会いたくてたまらなかった人が、そこに立っている。その姿を見た瞬間、その胸に飛び込んでいきたい衝動を、みのりはグッと我慢した。
 間髪いれずに、すぐにドアが開いたので、遼太郎の方も少し驚いているようだ。

「迎えに来てくれて、ありがとう。下に降りて待ってようと思ってたんだけど。」

 焦った雰囲気が漂うみのりの言葉に、遼太郎はいつものように、ただはにかんだ笑顔を見せた。

「車に乗ってきたんだよね?車はどこに停めた?下の駐車場?」

と言いながら、アパートの廊下を歩きだしたみのりに、遼太郎が声をかける。

「先生。ドアのカギはかけないんですか?」
「…えっ…!?」

みのりは慌てて戻って、バッグから鍵を取り出してしっかりと施錠した。
 決まり悪そうにチラリと遼太郎を見上げるみのりを、遼太郎は笑いを含ませた顔で見下ろした。


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